今年は「Tasty Love」のほかに、紅茶ソムリエとのコラボレーション「High Tea Love」コンサート、パティシエとの「Sweet Love」コンサートなど、バラエティに富んだ公演をお届けして参りました。コンサートだけではなく、制作面でも充実した一年になり、秋には世界配信第二弾シングル「Dearly Beloved」をリリースいたしました。これもひとえに皆様の応援のお陰だと思っています。

改めて自分を客観的に眺めてみると、90年代以降のアダルト・コンテンポラリー系のバラード歌手として、最後の世代の“現役”シンガーの位置に立っているという自覚があります。というのも、僕がやっているAORやブラコン、Smooth Jazzというバラード系の音楽は2000年代以降、下火になってしまい、現代ではほとんどのシンガーがやめてしまったからです。こうした状況にもかかわらず、昨今の80年代的古き良き風潮やムードを時の流れの外にあるものとして、バラードを現代の皆様にお届けできているという事実は尊いことだと感じています。

もちろん僕は個人で活動しているので、できることは限られていますが、ここ4、5年は自分のキャリアの中でもリリース曲、ワンマンコンサートの数がとりわけ多く、大多数の人には知られていないながらも、細々と闘志を燃やし活動し続けています。

このような活動は、応援してくれる皆様に支えられ、そのお陰で成り立っているわけですが、また他方、僕の中では「サスティナビリティ(継続していくこと)」がとても大切なことでもあります。そのため、コンサートだけでも、「Tasty Love」と「Sweet Love」を今日まで内容を変えながら、各4回も開催できていることについて、とても嬉しく感じています。

現代はインターネットやSNSが生活していくうえで主流のツールとなり、「自分の見たいものしか見ない」し、嫌になれば誰もがたやすく継続的なものから離れることができる時代でもあります。これは人と人の繋がりにおいても同じであり、自分にとって都合のいい部分だけを切り取り繋げていくことで、自分の人生のポートフォリオを誰もが自由自在に作れるようになりました。その結果、人々は「自分だけの世界」を中心とした視野感覚だけで満足してしまい、音楽を発信する側もある意味、そうした状態に陥っていると言えると思います。こうなっていくと、歌手や芸術家は誰になにを届けるのか、つまりは、自己を捉え社会に対して働きかけていくという精神的な実践がなくなり、継続的な本質はどんどん薄れていき、歌手としての存在の意味すら示せなくなってしまいます。「いまここ」での「いいね!」や話題作りの集積だけに人は関心を寄せ、発信者の側は、その場の刹那的な感情に奉仕することにしか、意味を見いだせなくなっている。このような現実には、皆様もきっとお気づきのことだと思います。

先述のアダルト・コンテンポラリー系のバラード歌手として、最後の世代の“現役”シンガーの位置に立っているという自覚。

この自覚にはきっと意味があると僕は思っています。だがその一方で、現代は「いまここ」での「いいね!」に重要な意味が付与されてしまう時代。こうした時代であるからこそ、毎回ステージに立つときにもらえる拍手や喝采、皆様の笑顔、こうしたものが現実的な意味を持つのだと信じたい。

来年は素晴らしい作家やミュージシャン、海外の作家と共作した新曲などをリリースする予定です。自信作となっておりますので、楽しみにしていただければ幸いです。

最後に、今年一年間応援していただいた皆様、そして今年初めてコンサートに遊びに来ていただいた皆様、たくさんの応援をありがとうございました。来年もがんばっていきます! これからも応援よろしくお願いします。  2017.12.30 川元清史

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